【判例時報watch】会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を主張する銀行が、同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することができるとされた事例

最高裁平成23年12月15日判決・判例時報2138号37頁

商事留置権は民事再生手続において別除権とされている(民事再生法53条1項)。
破産法では優先弁済権が付与されている(破産法66条1項)が、民事再生法ではそのような規定はない。
そこで、商事留置権者による弁済充当が(別除権の実行として)有効となるか(再生債権の弁済として)無効となるかが問題となる。

まず、その前提として、約束手形についての商事留置権がその取立金に及ぶか。
商事留置権の目的物としては、これが「自己の占有に属した債務者の所有する物」(商法521条)に該当することが必要である一方、判例上「金銭の所有権者は、特段の事情のない限り、その占有者と一致する」とされていることから、取立金は「債務者の所有する物」に該当せず、商事留置権の対象とならないのではないかという問題である。

しかし「取立金が銀行の計算上明らかになっているものである以上」商事留置権の目的物としての特定に欠けることはなく、上記にいう「特段の事情」が認められると判断された。

次に、留置権とは、債権の弁済を受けるまで目的物を留置する権利であって、弁済受領権が認められているわけではないが、弁済充当を可能とする合意がなされた場合には、別除権の行使に付随する合意として有効と判断された。仮に有効でないとしても、再生債権の弁済が禁止される再生手続中はこれを留置することが可能であり、再生手続終了後に相殺することが可能であって、他の再生債権者への弁済資金や再生債務者の事業資金に組み入れられることは期待できないのであるから、弁済充当合意の効力を認めても再生債務者や再生債権者を不当に害することはない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

【判例時報watch】信用保証会社が、抵当権つき債務を代位弁済したことにより、債務者に対する求償権とともに抵当権つきの原債権を取得した後、債務者について民事再生手続が開始され、その再生計画において求償債権が減額され、債務者において再生計画による減額後の求償債務を完済した場合においても、変更前の求償債権額から既払い額を控除した限度において右抵当権を行使することができるとされた事例

千葉地裁平成23年12月14日決定(執行異議申立却下)・判例時報2136号91頁

※最高裁平成23年11月24日判決(判例時報2134号62頁)の考え方に沿った判断

| | Comments (0) | TrackBack (0)

【判例時報watch】競売手続により区分所有建物を買い受け、管理組合に対し、前所有者が滞納した管理費等を支払った買受人が、破産手続を経て免責許可決定を受けた前所有者に対し、求償請求をし、当該区分所有建物が破産財団から放棄された後、買受人がこれを取得するまでに発生した管理費等について求償が認められた事例

原告(被上告人)X:買受人
被告(上告人)Y:前所有者

Y:平成18年8月1日から管理費を滞納
Y:平成18年11月14日、破産手続開始。Aが破産管財人に選任される
A:平成19年3月13日、本件区分所有建物を破産財団から放棄→Yの自由財産となる
(同日、破産手続廃止決定+免責許可決定)
X:平成19年7月18日、本件区分所有建物の所有権を競売により取得
その後、平成18年8月1日から平成19年7月17日までの滞納管理費等を支払う
X→Y:求償請求(本訴)

1)平成18年8月1日〜同年11月13日:破産債権→免責
2)平成18年11月14日〜平成19年3月12日:財団債権→破産者は責任を負わない
3)平成19年3月13日〜同年7月17日:破産者に対する債権→請求認容

「区分建物が破産財団から放棄された場合、破産者は当該区分建物を自由に使用収益処分する地位を与えられることにかんがみれば、一律に権利濫用等の法理を適用することは相当ということができない。上告人の主張は、立法論としては傾聴に値するとしても、信義則を含む現行法の解釈としては、いささか無理があり、これを採用することができない」

【雑感】
「立法論としては傾聴に値するとしても」の部分はサービス過剰なのではないか。
自由財産を取得した破産者が負担するのでなければ、管理組合か買受人が負担することにならざるを得ないが、それらはいずれも適切とは思われない。あるいは、破産財団(一般破産債権者)が負担することも、この点について放棄の効果が生じないことになり、適切とは思われない。

なお、上記のとおり、破産手続開始決定日から放棄日の前日までの分は財団債権となるので、破産管財人は気をつける必要がある(本件では異時廃止となったので、財団債権であったとしても弁済できなかった可能性がある)。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

【判例時報watch】求償権が破産(再生)債権である場合において、財団(共益)債権である原債権を破産(再生)手続によらないで行使することが認められた事例

最高裁平成23年11月22日判決・最高裁平成23年11月24日判決・判例時報2134号62頁

※判例時報では「・・・行使することの可否」というタイトルになっているが、これでは結論がわからないので、結論がわかるようなタイトルを考案した。

■最高裁平成23年11月22日判決
A←従業員らの労働債権(以下の破産事件において財団債権となるもの)
X:Aに代わって従業員らに労働債権を弁済
A:破産手続開始決定。Yが破産管財人に選任される
X→Y:従業員らに代位して、破産手続によらないで、同給与債権の支払を請求

(本判決)
弁済による代位により財団債権を取得した者は、同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる
「このように解したとしても、他の破産債権者は、もともと原債権者による上記財団債権の行使を甘受せざるを得ない立場にあったのであるから、不当に不利益を被るということはできない」

田原睦夫裁判官の補足意見の一部(要約ではない)
「なお、租税債権のように、弁済による代位自体がその債権の性質上生じない場合は別である」

■最高裁平成23年11月24日判決
A→STX:請負契約の前渡金(約264M円)を請求して受領
STX→A:前渡金返還請求権
STX→X:Aの返還債務をXが保証

A:再生手続開始決定。Yが再生管財人に選任される(管理型)。
Y→STX:請負契約を解除(双方未履行双務契約)
STX→Y:前渡金返還請求権は共益債権となる(民事再生法49条5項・破産法54条2項)
STX→X:Xは前渡金返還債務を代位弁済(求償権は再生債権)

(本判決)
弁済による代位により民事再生法上の共益債権を取得した者は、同人が再生債務者に対して取得した求償権が再生債権にすぎない場合であっても、再生手続によらないで上記共益債権を行使することができる

金築誠志裁判官の補足意見の一部(要約ではない)
「民法501条柱書の「自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内」が、原判決がいうように、求償権が存する場合にその求償できる上限の額の範囲内、すなわち実体法上の制約の範囲内を意味しており、手続法上の制約を一切含まないものと限定的に解することは、いささか早計のように思われ、問題となる手続法上の制約の性質、効果等を考慮して、個別的、具体的に検討する余地を残しておくことが賢明であると考える」

| | Comments (0) | TrackBack (0)

中央大学大学院「事業再生と倒産法」シラバス2012

今年度から、中央大学大学院戦略経営研究科で「事業再生と倒産法」の講義を担当しています。
来年度のシラバスができたので(某先生を真似て)ご紹介します。
=====
概要:倒産処理制度(破産・民事再生・会社更生)及び事業再生の各種手法並びに、実際の問題に直面した際にこれらの手続を選択する基準を、倒産事件を取り扱う弁護士の立場から法的に解説する。具体的事例や重要な裁判例をできるだけ紹介する。

科目の目的及び到達目標:倒産処理制度及び事業再生の各種手法並びにこれらを支える法律の基礎概念を理解する(または学生時代に学んだことを思い出す)こと。そしてそのことを通じて、当事者間の利害を適切に調整するための考え方を理解すること。

第1回 近年の倒産法と社会の動き・倒産処理制度の全体像
第2回〜第5回 破産手続
第6回〜第8回 民事再生手続
第9回 会社更生手続
第10回 倒産実体法
第11回〜第15回 各種の事業再生の手法

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「民事再生申立ての実務」(ぎょうせい)刊行

「編集委員」の一員として関与しました。アマゾンに置いてないのが理解に苦しみますが・・・
http://shop.gyosei.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=7310

→その後、アマゾンでも売られています。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「破産申立マニュアル」(商事法務)

これも、一部執筆の機会をいただいた。
タイトルは平凡だが、中身はユニーク。
オビにもあるように、破産管財人の経験者側から、あるべき破産申立ての実務を再検討した内容。
同時廃止の問題点を指摘し、一律の受任通知発信に疑問を投げかけており、議論のきっかけとなることが予想される。関係者必読。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「通常再生の実務Q&A120問―全倒ネットメーリングリストの質疑から」

一部執筆の機会をいただきました。
民事再生手続の実務本は意外と少ないので、役に立つと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の、ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約が無効とされた事例

最高裁平成20年12月16日判決・判例時報2040号16頁(民集登載予定とのこと)
「本件特約のうち、民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする部分は、民事再生手続の趣旨、目的に反するものとして無効と解するのが相当である」
と判断して上告棄却。
被上告人の管財人代理をしていたので、最高裁に初めて「傍聴」(管財人は当事者でないので、あくまでも「傍聴」)に行ってきました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

民事再生手続開始決定の後にした、再生債務者に対する同人所有の建物についての根抵当権設定の請求及び右請求についての再生手続の監督員に対する同意を求める請求がいずれも棄却された事例

大阪地裁平成20年10月31日判決・判例時報2039号51頁
請求棄却・原告控訴
再生債務者は民法177条の第三者に該当するとの判断。
原告は商工組合中央金庫。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧