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【判例時報watch】損害保険会社が交通事故の被害者の損害賠償請求権を保険代位した場合、被害者とともに消滅時効が進行するとし、加害者の消滅時効の援用の効力が認められた事例

東京地裁平成23年9月20日判決(控訴)・判例時報2138号75頁

平成13年7月20日:本件事故発生
平成17年3月18日:症状固定(消滅時効の起算点と認定)
平成18年10月16日:保険会社Xが被害者Aに対して人身事故障害補償保険金(約75M円)を支払う→被害者Aが有していた損害賠償請求権が保険会社Xに法律上当然に移転
平成19年12月26日:被害者Aが加害者Yを相手に訴訟提起
平成22年6月25日:保険会社X、加害者Yに対して本件訴訟提起(消滅時効が既に成立していた)
平成22年12月27日:AY間で訴訟上の和解成立(約166M円)
平成23年5月17日:加害者Yが保険会社Xに対して消滅時効援用

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【判例時報watch】会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を主張する銀行が、同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することができるとされた事例

最高裁平成23年12月15日判決・判例時報2138号37頁

商事留置権は民事再生手続において別除権とされている(民事再生法53条1項)。
破産法では優先弁済権が付与されている(破産法66条1項)が、民事再生法ではそのような規定はない。
そこで、商事留置権者による弁済充当が(別除権の実行として)有効となるか(再生債権の弁済として)無効となるかが問題となる。

まず、その前提として、約束手形についての商事留置権がその取立金に及ぶか。
商事留置権の目的物としては、これが「自己の占有に属した債務者の所有する物」(商法521条)に該当することが必要である一方、判例上「金銭の所有権者は、特段の事情のない限り、その占有者と一致する」とされていることから、取立金は「債務者の所有する物」に該当せず、商事留置権の対象とならないのではないかという問題である。

しかし「取立金が銀行の計算上明らかになっているものである以上」商事留置権の目的物としての特定に欠けることはなく、上記にいう「特段の事情」が認められると判断された。

次に、留置権とは、債権の弁済を受けるまで目的物を留置する権利であって、弁済受領権が認められているわけではないが、弁済充当を可能とする合意がなされた場合には、別除権の行使に付随する合意として有効と判断された。仮に有効でないとしても、再生債権の弁済が禁止される再生手続中はこれを留置することが可能であり、再生手続終了後に相殺することが可能であって、他の再生債権者への弁済資金や再生債務者の事業資金に組み入れられることは期待できないのであるから、弁済充当合意の効力を認めても再生債務者や再生債権者を不当に害することはない。

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【判例時報watch】衆議院国土交通委員の議員が、耐震強度が偽装されたマンションについて報じるテレビ番組等において、使用された生コンクリートは納入された会社の製造した粗悪品である等と発言したことにより、会社の信用が毀損されたとする損害賠償請求が認容された事例

横浜地裁平成23年11月24日判決(控訴)・判例時報2137号90頁

・公共性及び目的の公益性→認定(「単なる被告自身の売名を目的としたものであるとは認められない」)
・真実性→否定
・真実であると信じるにつき相当な理由→否定→名誉毀損成立
請求額3500万円に対して550万円認容
謝罪広告の必要性→否定
訴訟費用は9割が原告負担

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【判例時報watch】株式譲渡契約における売主の表明保証違反を理由とする補償金支払義務が否定された事例

大阪地裁平成23年7月25日判決(確定)・判例時報2137号79頁

平成17年9月:Y→X:T社の全株式を譲渡
・YはDDの際「偶発債務は存在しない」と回答した。
・YはDDの際、本件信託契約の契約書等、Xから求められたすべての資料を開示した→事実開示による免責を主張
・Xは、Yと協議することなく、本件修正申告を行った→Xの事前相談欠缺による免責を主張
平成19年4月:平成16年12月期の法人税の申告漏れを指摘され、約2億3500万円を追加納付
X→Y、補償金支払請求

(判決理由)
・事実開示による免責を認める
「本件においては・・・いやしくもデュー・ディリジェンスに携わる専門家であれば、Yの上記説明を受け、本件議事録を一読すれば、税務当局による本件指摘の可能性を認識し得たものというべきである」
・事前相談欠缺による免責を認める

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【判例時報watch】信用保証会社が、抵当権つき債務を代位弁済したことにより、債務者に対する求償権とともに抵当権つきの原債権を取得した後、債務者について民事再生手続が開始され、その再生計画において求償債権が減額され、債務者において再生計画による減額後の求償債務を完済した場合においても、変更前の求償債権額から既払い額を控除した限度において右抵当権を行使することができるとされた事例

千葉地裁平成23年12月14日決定(執行異議申立却下)・判例時報2136号91頁

※最高裁平成23年11月24日判決(判例時報2134号62頁)の考え方に沿った判断

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【判例時報watch】新設会社の分割行為が詐害行為に当たるとして、詐害行為取消権の範囲内で新設分割が取り消され、価額賠償として債権者の被保全債権の範囲内で新設会社が支払を命じられた事例

名古屋地裁平成23年7月22日判決(控訴)・判例時報2136号70頁

X:金融機関
X→A:貸付債権額96M円
A→Y:新設分割。金融機関に対する債務をAに残し、その他の債務はAが重畳的債務引受をした上でYに承継させる。Aは、Xに対する債務について「128年間」で分割返済すると述べる。
X→Y:会社分割の取消と96M円の価額賠償を請求

※いわゆる濫用的会社分割につき、対抗手段として詐害行為取消権が用いられた事例。被告は、
「本件会社分割は・・・事業価値の存続と雇用の場の確保という社会的意義を有する(ので詐害性が否定される)」と主張したが、裁判所は、
「この社会的意義を実現する手段として、民事再生手続や会社更生手続といった再建型の法的な倒産手続があることに照らせば、本来は同手続によるべきものといえるのであるから、上記のような社会的意義という観点から本件会社分割を正当化しうるものともいえない」
と述べ、被告の主張を認めず。

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【判例時報watch】いわゆる在外邦人国民審査権確認裁判

1)在外国民が次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えが裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないとされた事例

2)平成21年8月30日に行われた最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査までに国会が在外国民に最高裁判所の裁判官の審査権の行使を認める制度の創設にかかる立法措置を執らなかったことにより在外国民が審査権を行使することができない事態を生じさせていたことの憲法適合性については、重大な疑義があったものといわざるを得ないとされた事例

3)平成21年8月30日に行われた最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査までに国会が在外国民に最高裁判所の裁判官の審査権の行使を認める制度の創設にかかる立法措置を執らなかったことにより在外国民が審査権を行使することができない事態を生じさせていたことについて、憲法上要請される合理的期間内に是正がされなかったものとまでは断定することができず、憲法に違反するものとまではいえないものとされた事例

東京地裁平成23年4月26日判決(確定)・判例時報2136号3頁

※判例時報では、上記(1)と(2)について「・・・確認を求める訴えの適否」「・・・生じさせていたことの憲法適合性」というタイトルになっているが、これでは結論がわからないので、結論がわかるようなタイトルを考案した。(3)は結論がわかるタイトルになっている。

※上記(1)については「在外国民が次回の衆議院総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、在外選挙人名簿に基づいて投票をすることができる地位にあること」の確認を求める訴えの適法性について最高裁大法廷平成17年9月14日判決がこれを肯定したのとは異なるとの判断

※当初の報道では原告は控訴する方針であると報じられているが確定。以下のサイトでも説明は見当たらない。
在外邦人国民審査権確認裁判(一人一票実現国民会議)
http://www.ippyo.org/topics/2011051101.html

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【判例時報watch】弁護士であるテレビ番組の出演者において特定の刑事事件の弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして上記弁護団を構成する弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼びかけた行為が、不法行為法上違法とはいえないとされた事例

最高裁平成23年7月15日判決・判例時報2135号48頁

竹内行夫裁判官(外交官出身)と千葉勝美裁判官(裁判官出身)の補足意見が淡泊であるのに対して、須藤正彦裁判官(弁護士出身)の補足意見は文章も長く、慎重な思考プロセスをたどることができる。

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【判例時報watch】弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するとされた事例

最高裁平成23年10月11日決定・判例時報2136号9頁

内部文書性→肯定
不利益性→肯定
※文書提出命令の申立ての相手方は文書の所持者(本案訴訟の相手方とは限らない)

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【判例時報watch】競売手続により区分所有建物を買い受け、管理組合に対し、前所有者が滞納した管理費等を支払った買受人が、破産手続を経て免責許可決定を受けた前所有者に対し、求償請求をし、当該区分所有建物が破産財団から放棄された後、買受人がこれを取得するまでに発生した管理費等について求償が認められた事例

原告(被上告人)X:買受人
被告(上告人)Y:前所有者

Y:平成18年8月1日から管理費を滞納
Y:平成18年11月14日、破産手続開始。Aが破産管財人に選任される
A:平成19年3月13日、本件区分所有建物を破産財団から放棄→Yの自由財産となる
(同日、破産手続廃止決定+免責許可決定)
X:平成19年7月18日、本件区分所有建物の所有権を競売により取得
その後、平成18年8月1日から平成19年7月17日までの滞納管理費等を支払う
X→Y:求償請求(本訴)

1)平成18年8月1日〜同年11月13日:破産債権→免責
2)平成18年11月14日〜平成19年3月12日:財団債権→破産者は責任を負わない
3)平成19年3月13日〜同年7月17日:破産者に対する債権→請求認容

「区分建物が破産財団から放棄された場合、破産者は当該区分建物を自由に使用収益処分する地位を与えられることにかんがみれば、一律に権利濫用等の法理を適用することは相当ということができない。上告人の主張は、立法論としては傾聴に値するとしても、信義則を含む現行法の解釈としては、いささか無理があり、これを採用することができない」

【雑感】
「立法論としては傾聴に値するとしても」の部分はサービス過剰なのではないか。
自由財産を取得した破産者が負担するのでなければ、管理組合か買受人が負担することにならざるを得ないが、それらはいずれも適切とは思われない。あるいは、破産財団(一般破産債権者)が負担することも、この点について放棄の効果が生じないことになり、適切とは思われない。

なお、上記のとおり、破産手続開始決定日から放棄日の前日までの分は財団債権となるので、破産管財人は気をつける必要がある(本件では異時廃止となったので、財団債権であったとしても弁済できなかった可能性がある)。

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【判例時報watch】賃貸住宅更新料訴訟上告審判決

・消費者契約法10条が憲法29条1項に反しないとされた事例
・賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払いを約する条項が、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しないとされた事例

最高裁平成23年7月15日判決・判例時報2135号38頁

「更新料が、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有することは、前記・・・に説示したとおりであり、更新料の支払におよそ経済的合理性がないなどということはできない」
「また、一定の地域において、期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや、従前、裁判上の和解手続等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとして、これを当然に無効とする取扱いがなされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、換価し得ないほどの格差が存するとみることもできない」

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【判例時報watch】求償権が破産(再生)債権である場合において、財団(共益)債権である原債権を破産(再生)手続によらないで行使することが認められた事例

最高裁平成23年11月22日判決・最高裁平成23年11月24日判決・判例時報2134号62頁

※判例時報では「・・・行使することの可否」というタイトルになっているが、これでは結論がわからないので、結論がわかるようなタイトルを考案した。

■最高裁平成23年11月22日判決
A←従業員らの労働債権(以下の破産事件において財団債権となるもの)
X:Aに代わって従業員らに労働債権を弁済
A:破産手続開始決定。Yが破産管財人に選任される
X→Y:従業員らに代位して、破産手続によらないで、同給与債権の支払を請求

(本判決)
弁済による代位により財団債権を取得した者は、同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる
「このように解したとしても、他の破産債権者は、もともと原債権者による上記財団債権の行使を甘受せざるを得ない立場にあったのであるから、不当に不利益を被るということはできない」

田原睦夫裁判官の補足意見の一部(要約ではない)
「なお、租税債権のように、弁済による代位自体がその債権の性質上生じない場合は別である」

■最高裁平成23年11月24日判決
A→STX:請負契約の前渡金(約264M円)を請求して受領
STX→A:前渡金返還請求権
STX→X:Aの返還債務をXが保証

A:再生手続開始決定。Yが再生管財人に選任される(管理型)。
Y→STX:請負契約を解除(双方未履行双務契約)
STX→Y:前渡金返還請求権は共益債権となる(民事再生法49条5項・破産法54条2項)
STX→X:Xは前渡金返還債務を代位弁済(求償権は再生債権)

(本判決)
弁済による代位により民事再生法上の共益債権を取得した者は、同人が再生債務者に対して取得した求償権が再生債権にすぎない場合であっても、再生手続によらないで上記共益債権を行使することができる

金築誠志裁判官の補足意見の一部(要約ではない)
「民法501条柱書の「自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内」が、原判決がいうように、求償権が存する場合にその求償できる上限の額の範囲内、すなわち実体法上の制約の範囲内を意味しており、手続法上の制約を一切含まないものと限定的に解することは、いささか早計のように思われ、問題となる手続法上の制約の性質、効果等を考慮して、個別的、具体的に検討する余地を残しておくことが賢明であると考える」

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【判例時報watch】無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合において当該物の所有者が同契約を事後的に追認したとしても、その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得することはないと判断された事例

最高裁平成23年10月18日判決・判例時報2134号58頁

判例時報では「当該物の所有者の追認の効果」というタイトルになっているが、これでは結論がわからないので、結論がわかるようなタイトルを考案した。

B=A社の代表取締役
B→(工場を賃貸)→X
X:ブナシメジを生産
B:工場を実力で占拠
A→Y:ブナシメジ販売委託(本件販売委託契約)
A→(ブナシメジ出荷)→Y→第三者に販売して代金受領
X→Y:本件販売委託契約を追認
X→Y:売買代金請求

無権代理行為の追認についての民法116条の類推適用を否定
・契約相手(この場合は受託者)が予期しない者との取引を強制される
・受託者が無権利者(当初の委託者)に対して有していた抗弁を主張することができなくなる

田原睦夫裁判官の補足意見はなし。

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