« 【業務連絡】年末年始の予定 | Main | 改訂2版「これだけ!個人情報保護士試験(完全対策)」 »

宇賀克也「個人情報保護の理論と実務」(有斐閣)

私が被告代理人として担当した東京地裁平成19年6月27日判決への批判が掲載されています(95頁以下)。

以下、年末の雑事に紛れてあわただしく記すメモです。具体的請求権否定説の論文は、私のような当事者(代理人)ではなく、研究者の先生方にお任せしますが取り急ぎ。

宇賀先生に限らず肯定説論者が使う「立法者意思」とは何なんでしょう。
※「著者が確認した立法者意思に明らかに反する」(96頁)
※「訴訟による実効性確保も可能であるという立法者意思を前提とし」(105頁)

憲法によれば、国の唯一の立法機関は国会だとされているわけですが、国会審議における質疑を論拠とすることを明示しているのは岡村先生くらいで、あとは「立案に関与した有識者がそう考えていたらしい」という舞台裏の話。
※「個人情報保護法制化専門委員会においても・・・開示・訂正・利用停止の求めの裁判規範性を承認することに関しては、ほぼ異論がなかった」(104頁)

それを解釈の参考にするのはかまいませんが「立法者意思」というのはいかがなものかと思います。

また「不法行為が成立する場合に損害賠償請求も可能であることは、立法段階で確認されていた」(109頁)という記述もありますが、不法行為が成立すれば損害賠償請求も可能であることは民法709条によれば当然のこととしても、これが個人情報保護法の「立法段階で確認されていた」というのは何を意味するのかわかりません。

肯定説からは「否定説だとOECD8原則違反となるから否定説はおかしい」という主張もなされますが、解釈の順序を間違えているのではないかといわざるを得ません。現に先般の堀部先生の講演では、個人情報保護法がOECD8原則に抵触するとEUでは考えられている可能性があることが紹介されました(NBL912号未確認)。

最後に「行政機関個人情報保護法等と同様、請求権を正面から規定することにより、裁判上の救済が可能なことを明確にすべきであろう」と述べておられますが、このように法改正しない限り、現行法の解釈で請求権を肯定することは無理というのが私の考えです。
(法改正すべきかどうかはまた別の議論ですが)

なお「著者が調査した限りでは、個人情報保護法25条1項に基づく開示の求めの実効性確保手段としての訴訟を否定する趣旨と解しうる文献は皆無であった」(104頁)との記述があり、判例評論執筆時点(平成20年3月)ではそうだったかもしれませんが、その後、石井夏生利先生の「個人情報保護法の理念と現代的課題」(勁草書房)502頁で、本件東京地裁判決の理由付けは適切であるとの評価をいただいています。もちろん鈴木正朝先生にも(どの文献を指摘すればよいでしょうか>鈴木先生)。

|

« 【業務連絡】年末年始の予定 | Main | 改訂2版「これだけ!個人情報保護士試験(完全対策)」 »

情報ネットワーク法」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11972/47111192

Listed below are links to weblogs that reference 宇賀克也「個人情報保護の理論と実務」(有斐閣):

« 【業務連絡】年末年始の予定 | Main | 改訂2版「これだけ!個人情報保護士試験(完全対策)」 »