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デューディリジェンスにおける同意の要否

 経済産業分野ガイドラインの続き。

(意見の要約)
 潜在的投資家又は会社資産の潜在的な購入者が企図する取引に関連するデュー・ディリジェンスを目的として個人情報を調査する必要がある場合又は商品やサービスを購入するための資金調達方法を提示する財務顧問に対しては、かかる情報を得るために同意を必要としないことを明確にするべき。

(考え方)
 ご指摘のような場合には、個人名を伏せたり、又は個人情報を匿名化したりして、特定の個人が識別できないようにして提供すること等の措置を講じれば、本人の同意を必要としないと解されます。

(私見)
 識別不能化措置を講じれば本人の同意が必要ないのは(この種の取引に限らず)当たり前のこと。
 この種の取引において識別不能化措置を講じなかった場合にどうなのかについては明確な「考え方」が示されていない。
 この種の取引において、個人識別不能の状態で常に目的が達成されるかどうかは疑問であるし、株式や指名債権の自由譲渡性が阻害されるような解釈が適切とは考えにくい。金融庁ガイドラインでの(上記「意見」と同じ方向での)明確化を期待したい。

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Comments

「事業の承継に伴って」(23条4項2号)という文言からは、 デューディリジェンスの初期段階をすべて包含するというのは、やや強引にすぎる感じがします(事業承継に「伴う」と評価するほどの実態が形成されていないことが多いからです)。とはいえ、個人情報保護法でM&A実務に多大な影響を与えることは意図していないと思いますし、結論としての妥当性に欠ける面もあるかなぁと。
匿名情報だけでは、企業価値を把握できないことは多々あるわけですし(顧客DBから顧客数が水増しされていないか確認する場合、キーマンとなる人材がどの程度在籍しているか労働者名簿で確認する場合など)
まったくの私見ですが、ここは、守秘契約を交わして行うデューディリジェンスは、「委託」関係で処理すべきではないかと思います。委託は本人の同意なく行い得るわけですが、それとのバランスということもあるかなぁと。
今度書いた本にこの点を少しふれてみました。

Posted by: 鈴木正朝 | 2004.11.02 at 07:24

 コメントありがとうございます。
 初期段階もDDにおける不可分の構成要素である以上、初期段階だけを取り出して「合併その他の事由による事業の承継に伴って」(法23条4項2号)に該当しないと解釈することには疑問を感じます。
 また、DDが実施されるのは「合併その他の事由による事業の承継」の場合に限られないと仮定すると、DD問題一般を法23条4項2号で対応するのは本筋ではないのではないかと思います。このように仮定せず、債権譲渡と株式譲渡と営業譲渡すべて(これで網羅しているでしょうか)について法23条4項2号で対応するならいいのですが、それこそ文言解釈から離れるのではないかと思います。
 一方、守秘契約に基づいて行われるDDを「委託」と解釈して法22条で処理する方向性は、DD問題一般をカバーするという意味では検討に値しますが、事業者自身の事務を第三者に扱わせるという「委託」の一般的意味合いからすると、DDが事業者自身の事務といえるかどうか(→いえる、ということでコンセンサスが成立するなら結論について異論を差し挟むつもりはありませんが)。
 そうなると、原則的に自由譲渡性が認められる債権譲渡と株式譲渡と営業譲渡のすべてについて「法令に基づく場合」(法23条1項1号)に該当すると解釈するのが適当なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。ふんどしが緩すぎる、という批判は覚悟しておりますが・・・

※せっかくですから「今度書いた本」と「少しふれてみました」部分を具体的にご紹介いただきたく。

Posted by: 鶴巻 暁 | 2004.11.02 at 23:35

 M&Aは、当然のことながら、非常に多様で、定型的なニュアンスで語ることの是非という問題もあるかと思いますが、先生のご意見に接して、DDの捉え方もまた多様なのであろうなぁと思いました。なんといいますか、結果として破談になることばかりを経験している者において捉えるDDというものの印象は、事業承継に伴う場合の前処理でしかないという思いが強くなるわけです。段階的に成熟していく契約関係において、どのラインで「事業の承継に伴い」と解するべきかという問題において、理念的に境界線を画そうとする場合、基本合意時や本契約時に置くべきか、さらにその前の段階も含むとすべきかは、価値判断レベルでは、やはり経験(耳学問も含む)に左右されてしまうところはあるかもしれませんね。
 また、実際M&Aが成功した場合を判断の起点として振り返って考える場合は、その着手の段階から「伴う」と解してもいい感じがしますが、同時進行的に、当該行為が第三者提供に該当しないかどうかを考える場合は、M&A目的であれば、不確実な初期段階から包括的に第三者提供の事前同意原則から免れてしまうという理解を与えてしまうのは、行為規範として妥当か否かという観点も必要なのではないかなという気もします。
 「委託」の条項を準用したいという点は、委託先の監督責任という観点から、DD業務に一定の規律を与えつつ、一方で、個人情報保護法で、現実のM&A実務に過剰な規制を与えないという妥当な結論に落としたいというねらいからでした。

Posted by: 鈴木 | 2004.11.03 at 09:32

 上記の点は、十分に述べられたわけではありませんが、一応委託で処理すべきことについての私見を下記の書籍でふれてみました。

堀部政男監修・鈴木正朝著『個人情報保護法とコンプライアンス・プログラム』(商事法務,2004年11月9日)3800円+税

 来週あたりから書店に並べて頂けるかなぁと思います。
 全体で500頁ですが、本文は300頁ほどです。
先生の本ブログでのご指摘を目にして、急遽、頁オーバーだったのですが、索引をつけ、目次も詳細化しました(^^)。

Posted by: 鈴木正朝 | 2004.11.03 at 09:42

 コメントありがとうございます。今後の参考にしたいと思います。
 また、新著のご紹介もありがとうございます。さっそく拝読させていただきます。まだご自分のサイト・blogでも紹介されていないのでは??
 今後ともよろしくお願いします。

Posted by: 鶴巻 暁 | 2004.11.03 at 13:54

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