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不当要求のコスト計算

 朝日新聞の記事「個人情報の「お値段」は500円? 流出で企業対応様々」のうち、この部分が気になった。

 流出情報をもとに恐喝未遂の被害に遭ったソフトバンクは「あまりに高額な賠償金を課すと、恐喝が容易になるおそれもある」と警戒する。

(記事のニュアンスが正確かどうかわからないので、直接のコメントは避ける)

 不当要求対応の現場において、不当要求に応じてカネを払ったほうが安いのではないかと語られることがあるらしい。個人情報が流出した場合のコストよりも、不当要求に応じた場合のコストのほうが安上がりというわけだ。

 しかし、不当要求に応じた場合のコストC1は、
a)不当要求に応じて支払った額だけでなく、
b)不当要求に応じたことが露見した場合のコスト
c)個人情報が流出したことが露見した場合のコスト(例えば賠償金)
まで含めて考えなければフェアでない。これらのうち(b)と(c)は不当要求に応じたことが露見した場合にのみ生じるので、その可能性をp(0≦p≦1)とすると、次のような計算式が成り立つ。

 C1=a+(b+c)p

 一方、不当要求に応じなかった場合のコストC2の計算式は、

 C2=c

である。事件ごとに具体的な数値を代入しなければイメージがつかみにくいかもしれないが、bは非常に大きい(個人情報関係ではないが、最近では西武鉄道利益供与事件が参考になる)ので、pが限りなくゼロに近くなければC1<C2つまり「不当要求に応じた場合のコストのほうが安上がり」という状況は成立しない。
 個人情報はこれだけ流出しているのに、不当要求に応じたという情報だけは流出せず完全犯罪が成立すると想定するのは、控えめに言ってもかなり無理があるのであって「不当要求に応じた場合のコストのほうが安上がり」というのは「コスト計算」と呼ぶに値せず、さしたる根拠もなくp≒0との仮定に立つ「バクチ」というほかない。
 要するに、ゼロではないpをゼロに見せるのが不当要求ビジネスのキモであるが、そのセールストークに引っかかっても誰も同情してくれないどころか、さらに多額のコスト負担(上記のb)を覚悟しなければならない。

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