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株主総会とはいったい何モノなのか?

 最新刊の紹介でなくて恐縮だが、木村剛「ニッポンスタンダード・日本資本主義の哲学」(PHP研究所)を読んでいたところ「株主総会とはいったい何モノなのか?」という節があり、著者の知人がある会社の株主総会に出席したところ、

1)前方のほうには経営者が発言するたびに「了解」「異議なし」と吠える意味不明の応援団。
2)質問者は取締役からいちばん遠いところから声を上げる
3)株主の周囲にはがたいの大きい若い社員が「整理係」として株主を監視しているようす。
4)株主からの質問を総会議長と会社の総責任者であるはずの取締役社長が直接答えず、脇に座っている取締役に質問をふって場合によっては補足する
(以下略)

という状況だったと書かれていた。

 株主総会の準備支援業務を行っている私から見れば、それぞれ事情があってやむを得ない措置である(もちろん適法でもあるのだろう)。
 しかし、個別の措置を完璧に実施しようという意思が強まるあまり「経営の委託元である株主に対して経営方針をていねいに説明する」という、より高次の方針がおろそかになってしまうことは(法的な意味における説明義務違反まではいかないとしても)実は、耳が痛い問題である。

 例えば「了解」「異議なし」については、議事進行上の措置や動議・議案の採否について(文字どおり)異議なく了解されたか否かを確認するために、異議なく了解している株主には「明確に」発声していただくことが望ましい。議長が「ご異議ございませんでしょうか」と議場に諮っているのに議場が完全にノーリアクションだったら議事進行できなくなってしまうからである。
 しかし「吠える」必要はない。記録に残る程度に普通に発声すればいいのだ。不規則発言が飛んでいたら、不規則発言にかき消されない程度に多少大きな声で発声すればいいのだ。ところがこの「普通に」とか「多少大きな声」といったニュアンスは本番ではなかなか難しいらしく、とくに前列に座っている株主には議場全体の様子がわかりにくいため、つい強い調子で「了解!」「異議なし!」と「吠えて」しまいがちである。

 また、社長が直接答弁しないというのも、場合によっては当然である。個別の事業の実績などは担当取締役が説明するほうが適切だろうし、そのための担当取締役でもあろう。実際にも、担当分野を熟知している取締役が、議長から答弁を指名されるまでもなく「この質問ならば自分が答弁する」と自覚し、自信をもって堂々と自分の言葉で答弁しているのが一般であると思う。
 しかし、これも程度問題である。社長自ら答弁すべきか否かの判断が議長と議場とで食い違うと「答弁を丸投げして、株主に対する説明能力が乏しい経営者」との印象を与えてしまいかねない。実際のところ、担当取締役に答弁させるか議長自ら答弁するかの区別は、自明のようにみえて実は紙一重のことも少なくないから悩みは尽きない。

 要するに、大きな方針を実現するためにたくさんの個別の措置を講じるときには、個別の措置に振り回されることなく、常に大きな方針を忘れないようにしなければならないということである。
 とくに、分業が進んだ大企業ほど、大量の個別の措置が高度にマニュアル化される傾向にあるため、マニュアル化の弊害としてマニュアルに振り回される事態も生じやすいので、より注意が必要である。

「破産法案が参議院に提出」に追記。

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