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破産者の自由財産(金銭)の拡張により、同時廃止と管財事件の振り分け基準は変わるか

 この記事の続き。

 これまでは、破産者の自由財産(金銭)は21万円以下で、破産申立人が20万円未満の現金しか持っていない場合には原則として同時廃止とされていた。
 改正破産法の施行により破産者の自由財産(金銭)が99万円に拡張されると、これと連動して、例えば破産申立人が99万円以下の現金しか持っていない場合には同時廃止となるのだろうか、ということに一部関係者の関心が集まっている。
 しかし、現行破産法も破産法案も、同時廃止の要件は「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」(要するに破産管財人の報酬を支払えないとき)となっており、この点に変更はない(下記条文参照)。また、破産手続の費用の最低額も変更はない(20万円)と見込まれている。
 そうすると、破産者の自由財産(金銭)が99万円に拡張したとしても、やはり20万円以上の現金を持っている場合には「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する」とは認められないので、同時廃止ではなく管財人が選任されると考えられる(しかし、破産者が有する99万円までの金銭は自由財産であるから、破産財団には組み込まれない)。
 要するに、破産者の自由財産(金銭)と同時廃止基準は、これまで同額というイメージで扱われてきた(もっとも、21万円と20万円だから厳密には同額ではない)が、理論的には両者を同額にする必然性はないのである。
 よって、本記事タイトルの疑問に対しては「振り分け基準は変わらない」という回答になろう。

現行破産法145条1項
 裁判所カ破産財団ヲ以テ破産手続ノ費用ヲ償フニ足ラスト認ムルトキハ破産ノ宣告ト同時ニ破産廃止ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
破産法案216条1項
 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。

※同時廃止の条項は、現行破産法では「第2章 破産宣告」に置かれているが、破産法案では「第9章 破産手続の終了」に置かれているので、現行法のつもりで「破産手続開始の決定」(破産法案30条)のあたりを探しても見つからない。

※本記事は、某所での議論を私が個人的に整理したものであり、改正破産法施行後の運用が上記のように決まったという趣旨ではない。また、東京地裁本庁の運用を念頭に置いたものであり、他の裁判所では違う扱いになる可能性もある。念のため。

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